自転車の交通事故

自転車通行可の標識を減らしているそうです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130525/k10014839591000.html

自転車乗りの端くれとして、この「自転車は車道を走れ」は悲しい物があるものの、明らかに酷い走り方をしている人がいるのは事実だし、個人的にはそういった、我が物顔で歩行者の脇をすり抜けていく人に怒りを感じます。車道を走る時には車の交通状況を常に気にした上で車道走り、車の通行の妨げになると思った場合には、十分に歩行者との間隔を空けた上で、いつでも危険を回避できるように気を配って走っていている人までも、そういったマナーの悪い人たちと同じように見られるのはつらいです。

で、気になったのは、上記のニュースのこの部分です。

警察庁によりますと、自転車が歩行者に接触する事故は去年、全国で2625件と、10年連続で2000件を超え、死亡事故も5件起きるなど深刻な状態が続いています。

警察庁によると、

  • 10 年連続で 2000 件を超えている。
  • うち、死亡事故が 5 件ある。

という事は「深刻な事態である」として、自転車専用道の整備もできていない現状で、自転車を車道へ追い出している点です。

「じゃぁ、自転車と自動車の間の事故は、これよりも深刻ではないの?」と疑問に思いました。

警察庁」「自転車」「自動車」「事故」でググって見つかったのが下記の資料です。

自転車関連事故の状況(PDF)

この資料は、平成 13 〜 23 年の統計で、前述の報道で言われている資料より一年古いものだと思いますが、平成 23 年の事故は、

  • 自転車と自動車の事故件数: 121,004 件(うち死亡事故 556 件)
  • 自転車と歩行者の事故件数: 2,801 件(うち死亡事故 6 件)

とあります。少なくとも、「点」の数字としては、自転車と自動車の事故の方が圧倒的に多いし、事故全体に占める死亡事故の割合も、

  • 自転車と自動車: 556 / 121,004 = 0.46%
  • 自転車と歩行者: 6 / 2,801 = 0.21%

と、自動車との事故の方が高くなります。ちょっと単純すぎる比較*1ですが、自転車に乗る者にとって車道の方が危険である事には違いないでしょう。

ただ、トレンドとしては自動車と自転車の事故件数はこの 10 年あまりで 15 % 程度減少し、死亡事故に関しては 40% 近く減っているのに対し、歩行者との事故は 50 % 以上増加していて、死亡事故も 4〜6 人で推移している、ということから、自転車と歩行者の事故を減らすための対策が必要、という事に異論はありません。

自転車の信号無視の取り締まりをやっているニュース映像を見たことがありますが、こういった取り締まりの強化には賛成します。自転車の飲酒運転とか、夜間無灯火とか、傘を差したままの運転とか、明らかに危険な行為に対して、もっと厳しくて良いと思います。

ただ、歩行者との事故を減らすために「車道を走れ」というのは、自転車を乗る人に対して、より危険な選択を迫っていることになります。

「車道が原則」である事は分かりますが、そのために、より危険な方へ追い込むのは本末転倒な気が...

*1:例えば、そもそも交差点のように、自転車も歩行者も車道を通行する区間での事故の場合、自転車が通行していたのが、歩道とも車道とも言えない、とか。ただ、車両相互の追突事故だけでも 1,853 件あり、このケースの多くは車道走行中と思われる。