せきゅぽろ 19

久しぶりに参加したせきゅぽろの勉強会は、Google に名前を入れると、広島出身のテクノポップアイドルの名前がサジェスチョンされる、辻 伸弘さんでした。辻さんは何度かせきゅぽろにいらっしゃっているはずですが、私個人は初めてでした。

テーマはまず最初に、昨今の不正ログインに関する話でした。

かつては総当たりや辞書攻撃、その応用のリバース・ブルートフォース(パスワードを固定にして ID の方を次々にかえる)が主流だったと思いますが、この1、2年で急速に脚光を浴びたのが、あらかじめ入手されているアカウントとパスワードの組み合わせのリストを利用したリスト型攻撃です。

ブルートフォース型の攻撃だと、パスワードが十分な長さで複雑であれば、現実的な時間で突破される事はない、という「時間軸」での問題だったのに対し、リスト型攻撃の場合、あるサイトで使っていたパスワードを使い回していると、他のサイトで突破される、いわば「横展開」の問題に変化したのが特徴だと思います。

辻さんがある人から持ちかけられた相談で、1000 万件のリストを 400 万円で買わないか? という話があったそうです。ただ、そのリストのサンプルを辻さんが眺めていて、似たようなパスワードがあったり、いわゆる脆弱なパスワードが見当たらない、など、本物かどうか怪しい感じ、そのリストにあるメールアドレスで検索したら、パスワードはハッシュ化されているけど、同じメールアドレスの一覧が見つかって、リストのパスワードと、検索して見つかったパスワードのハッシュ値を突き合わせたら、どうやらそのリストは偽物だった、ということがあったそうです。

2つめのテーマは、Phishing に関して。実際に Phishing サイトを作るツールを使って作られた、全く同じ画面のサイトにアカウント・パスワードを入力すると、その Phishing サイトのログにパスワードが記録されるところを、実際のデモで見せてもらえました。

辻さんは最近、Phishing サイトに引っかかるのが趣味で、下記のページで、その様子が読めます。

(n) – life is penetration. geeks cheer. geeks be ambitious.

Phishing は、特定の組織を狙えば標的型攻撃になる訳ですが、そういった標的型攻撃メールの対応訓練に関して、間違った訓練になっている、という指摘がありました。単純に開封率やクリック率を見て一喜一憂するのは無駄で、誰が開いたかが重要だし、そもそも、開いてしまった時にどうするのか、という訓練にならないと意味がない、というお話はその通りだと思いました。

3つめは、自分自身のプライバシーを守るために、利用できるツールの紹介でした。匿名化や暗号化ツールは、他方で犯罪者に使われるのでダーティなイメージがあるけど、包丁と同じでツール自体はどっちにも使える、というお話がありました。

最後に、実際に自分のセキュリティを守るために、専門家だけが啓蒙活動するだけはなく、草の根的な広がりが大切、という事を話されていました。自分もその端くれになっていれば良いなぁ、という思いを強くしました。

余談:
最後の質疑応答のところで、「徳丸本」が意外に知られていない事が判明。徳丸さん、せきゅぽろに来ませんか?
ハッシュ値、ソルト、ストレッチングに関する話題の場面でしたが、手前味噌で良ければ、私も書いたことがあるので、参考になれば幸いです。

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